のんびり日記

のんびり生きましょう

林十江 「双鰻図」

作品の解説や紹介が目的ではありません。正しい/正しくないなどは置いておいて、自分の感じたこと、考えたこと、想像したことを自由に書きたいと思います

https://image.tnm.jp/image/1024/C0021712.jpg参照:東京国立博物館C0021712 鰻図 - 東京国立博物館 画像検索

新年1発目の今日は林十江の「双鰻図」について見たいと思います。

まず素直な感想として線が美しい。不鮮明である部分(上部の墨で塗られた部分)から抜け出して、透明な透き通った世界へとやってきた2匹の鰻。水中を泳ぐ彼らの身体が作り出す曲線は美しく、そんな2匹は身体を交差させて今出会おうとしている。画面上部だけが塗られているために、雲からすり抜けてきたようにも見える。

2匹の鰻は何をしているのだろうか。僕には人間の小さい子供がじゃれあって、追いかけっこしている姿が目に浮かぶ。彼らも水中の中で無邪気に遊びとして追いかけあいっこしているのではないだろうか。画面上部の墨で塗られた部分も、彼らの過去の軌跡が合成されて塗られているように見える。著者の筆の跡から見ても、あらゆる方向に向けて筆をふるっていることが見て取れる。くねくねとじゃれあっていた場所から、まだ真っ新な空間へと飛び出してきた。そんな風に見えなくもない。新たな空間に飛び出した最初だけ彼らの動きは鮮明にそして美しく捉えられる。しかし、その新たな空間もやがて彼らが遊びまわることで上部同様に不鮮明になり見ることはできなくなる。その一瞬の間だけ鮮明に現れる彼らが生み出す線は美しくもあり、同時にすぐに消えてしまうという儚さもある。

気になるのが、この鰻の長い線。なぜこの長い線を描くに至ったのか。おそらく本当に林十江にはこの絵のように鰻が見えたのだと思う。時間に対する感覚が現代を生きる我々とは異なるのではないだろうか。鰻の進んだ軌跡が現在の鰻と合成される。時間はグラデーションのように流れ、過去からの連続性がしばらくの間は昔の人は捉えられていたのかもしれない。

以前チームラボの作品を佐賀の御船山楽園で見たことがあるが、そこでの作品はこの林十江の作品をアップデートしたのではないだろうか。確か鯉だったけど、非常に美しくも儚い作品であったことを覚えている。