のんびり日記

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柿本人麻呂 「淡路の 野島の崎の 浜風に 妹が結びし 紐吹き返す」

今日は万葉の詩を1つ見たいと思います。

淡路の 野島の崎の 浜風に 妹が結びし 紐吹き返す

万葉の世界でも有名な歌人の一人である柿本人麻呂による詩。
平安時代に生きた人々にとって、「結ぶ」という行為には祈りや思いを込めると言った意味合いがあった。妹が恋い慕う者を指せば、妹が結びし紐は、恋い慕う者が我のためを思って結んでくれた紐ということになる。淡路にいるなら人麻呂は旅に出ているのであると推測できる。だから旅先に出る前に妹が着物の紐を旅先での無事を祈って結んでくれたのだろう。その妹の思いが紐には閉じ込められている。人麻呂はその紐を見返すたびに妹のことを思い出し、恋い慕う者が自分の無事を祈ってくれているのだと思いを馳せることで元気を出していた、そんな風な気がする。今で言うならお守りとかミサンガとかになるのかもしれない。
この詩は最後に吹き返すとある。私は動的、さらに言えば流動的なイメージが風にはある。淡路の浜風が妹が結んだ紐を揺らしているのを見た人麻呂は、風が我を偲ぶ妹の思いを乗せてやってきたのだろうかと感じたのではないだろうか。恋愛に冷めた人にとったら何言ってんだコイツと思うかもしれないが、人麻呂の中ではその紐と共に妹が生きていた。

今となっては「君の名は」の影響もあり、「結び」に特別な意味があることを知っている人も多いだろう。「結び」は結ぶという人間の行為がそこには必ず発生するので人間の意志の表れと捉えられる。神社でおみくじを結んだりするのもその影響ではないだろうか。