のんびり日記

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富岡鉄斎 「福内鬼外図」

作品の解説や紹介が目的ではありません。正しい/正しくないなどは置いておいて、自分の感じたこと、考えたこと、想像したことを自由に書きたいと思います

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「福内鬼外図」(『生誕一五〇年記念 富岡鉄斎展』より参照)

この絵は、とにかく面白い。作者である鉄斎がいかにユーモアに溢れた人間であり、かつ純粋無垢な遊び心を持って絵画に挑んでいたかが垣間見える作品でもある。鬼という文字を鬼に見立てて追い払っているが、その鬼が逃げる姿の滑稽具合がなんとも言えない愛くるしさを持っている。見ていてクスッと笑えると同時になんだかほっこりする気持ちになれる。女性の顔は豆そのものになっているようにも見えるけど、昔の女性は大抵こんな風に描かれることが多かったかなとも思う。

注目したいのはそこだけではない。特徴的な書を見てみよう。うまく表現できないがひょろひょろっとこの絵の滑稽味と合致した線で描かれている。また、書と女性の関係性も面白い。書で用いられた線がそのまま女性にも適用されているのが分かり、書と一体となっているし、書の延長上に女性が存在している。そういった中での鬼である。つまり、鬼という文字が鬼に見立てられた理由はそこにあるのかもしれない。女性に内在している鬼を外へ追い払うという意味においても、女性は書の延長上に存在しなければいけなかったし、鬼は絵画による侵入はあるものの書として存在しなければいけなかったのかもしれない。逃げている鬼の姿が、文中の「鬼」の文字と非常に似ていることからも、文中からひょいっと飛び出し逃げてきた様子が想像できる。

これを描いたのが89歳っていうのがまた、彼の生き様を表しているような作品だと勝手ながら感じた。